HON[.]jp メールマガジン #383 2026年7月13日版
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週刊出版ニュースまとめ&コラム
#723(2026年7月5日~11日)
編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。HON.jp News Blog のウェブサイトでも同時に公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。
【政治】
◆ 中国、AIとの「感情的交流」を規制 バイトダンスとアリババが「擬人化AI」終了へ〈CNET Japan(2026年7月6日)〉
2026年上半期振り返りの「HON.jp News Casting」で、libro氏がマンガやアニメのキャラクターを模したAIチャットボットについて取り上げ、コンテンツビジネスとの可処分時間の奪い合いという意味で注目しているとおっしゃってました。noteで番外編も書かれてますね。番組内では「熱中し過ぎちゃうので規制の動きもある」という指摘もありました。
中国のこの規制は「人間の人格や思考パターンを模倣し、継続的な感情的交流を提供するAIサービス」が対象となります。中国のAI企業各社はすでに、規制が施行される7月15日までのサービス終了を発表しています。問題視されているのは「継続的な感情交流」なので、恐らく創作世界の人気キャラクターを模したものもこの規制対象でしょう。
それにしても動きが早い。早すぎる。これ、裏を返せば、中国政府が「規制しなきゃまずい」と判断するほどパワーがあるコンテンツであることを意味しますよね。日本でもこれから流行るかな。
◆ AI検索の記事利用、公取委が報道機関の見解確認へ 独禁法抵触の懸念〈日本経済新聞(2026年7月8日)〉
優越的地位の濫用にあたる可能性があるので実態調査に乗り出す方針という報道が、2025年12月の時点でありました。公取委では情報提供の依頼も行われていました。半年経ってようやく、報道機関の見解確認という段階まできたようです。時間かかるなあ。
公取委はどういう判断を下すでしょうか。イギリスみたいに「メディアが利用拒否可能な手段を提供せよ」って言うかな? でも、Googleはもう試験提供を始めていて今後グローバルに提供予定だから(判断が早い!)、あとはOpenAI、Perplexity、Anthropicなど向けへの規制ということになるかも。
◆ クールジャパンの失敗は生かされず? 経産省肝いりで始まった後釜施策「IP360」の光と影:まつもとあつしの「アニメノミライ」〈ITmedia NEWS(2026年7月9日)〉
クールジャパン機構の失敗をIP360は生かしているのか? という問題提起。司令塔の役割が重要という指摘と問題意識は私と同じです。また、ほぼ同時に読売新聞と日本経済新聞も総括を求める社説を書いています。私の調べた範囲では、朝日新聞・毎日新聞・産経新聞はまだ社説までは書いておらず、オピニオン記事どまりです。これから出てくるかな?
ちなみに文化の土壌を豊かにする「アーカイブへの投資」については、たとえば国立国会図書館所蔵資料デジタル化予算は長らく年1億円~2億円程度でした。それがリーマンショック対策の2009年度補正予算でいきなり127億円。でもその後また激減して、継続的にきちんと潤沢な予算が付けられるようになるには、やはり政治の力が必要でした。そういう事例もあるので、結局のところ政治的な働きかけをどうやるか次第なのかもしれません。
なお、これはあまり指摘する声を見ないのですが、政府としてはすでに岸田文雄内閣時代の2024年6月に「新たなクールジャパン戦略」としてリブート(再起動)を図っています。従来のクールジャパン戦略の振り返りでは「PDCAサイクルの欠如」「分野連携・分野横断の取組が不十分」「インテリジェンス機能に乏しい」「独自プラットフォームが少ない」「コンテンツ分野は国内市場向けが中心」「再投資のエコシステムが形成されていない」「日本の魅力が海外に十分に届いていない」「クリエイターが活動する環境の整備が不十分」「ビジネス・プロデューサー等の人材が不足」といった課題がすでに挙げられています。なにも反省していないわけではない。もちろん、そこから2年経った状況を踏まえた総括も必要だとは思います。
また「クールジャパン戦略」という全体の話とは別に、クールジャパン機構(株式会社海外需要開拓支援機構)単独での総括も必要です。2024年には「これまでの投資実損の約60億円の主要因は、数件の『メディア・コンテンツ』の新規で日本企業が行う海外展開プラットフォーム事業によるもの(2022年度決算ベース)」とされていたのに、最近の報道では「メディア・コンテンツ」は27%に過ぎないと変わったのはなぜなのか? といった点も報道機関にはきっちり追求してほしい。恐らく当時、損失が確定していたのが「メディア・コンテンツ」中心で、他の分野は含み損の状態だったのだと思いますが。
【社会】
◆ 電子書籍ビジネス調査報告書2026〈インプレス総合研究所(2026年7月7日)〉
インプレス総合研究所にお知らせが出ました。今回から初めて執筆陣に加わりました。個人ブログからスタートした無名の書き手が、長年刊行の続く業界の権威と言っていい報告書に名を連ねるようになるまで、15年かかりました。感無量です。「第4章 社会制度とテクノロジー」の「4.1 生成AIと出版ビジネス」と「4.2 国の施策と法制度」担当しています。
◆ 「フジと似た構造」と識者 小学館「マンガワン」原作者性加害〈毎日新聞(2026年7月9日)〉
しばらく続報を見ていませんでしたが、第三者委員会の調査は進んでいて「調査結果や提言は今夏にも公表される見通し」とのことです。
【経済】
◆ Getty Images Fought AI In The Courts, Lost, Then Lucratively Partnered With It: Lessons For Book Publishing(ゲッティイメージズはAIと法廷で争い敗訴したが、その後AIと提携して大きな利益を得た:書籍出版業界への教訓)〈The New Publishing Standard(2026年7月4日)〉
こちらのコラム、まずモネ騒動を例にして、「人間の創造力にAIは勝てない」というのは幻想だと切り捨てています。そして、Getty ImagesがAI企業との裁判に負けたことを挙げ、「いずれ裁判所が解決してくれるだろう」というのも甘い考えだと指摘。さらに、法廷で敵対するいっぽうで、学習用途ではなく表示用途での契約を結んで収益を得たやり方を称賛しています。
以前私はメルマガ増刊号で「『AIに食わせる』は、学習(training)? 参照(reference)?」と書いた(※サポーター限定部分)のですが、それと同じような指摘と言えるでしょう。つまり「学習用と参照用では用途が違う」のです。用途が違うのだから、学習用途はダメだけど、参照用途あるいはGettyのような表示用途なら提供してやってもいいよ(もちろ有償で)、という契約の結び方は可能なのです。
◆ Bookshop.org on Kobo e-readers will go live in 2026(コボ電子書籍リーダーのブックショップ・ドット・オーグは2026年にサービス開始予定)〈Good e-Reader(2026年7月6日)〉
この記事には書いてありませんが、要するにKobo端末のLCP対応待ちでしょう。これも以前メルマガ増刊号で書きましたがBookshop.orgはすでにLCP対応なので、同じくLCP対応済みのドイツTolino端末(開発はRakuten Kobo)なら使えるようになっているはず(アメリカでTolino端末は売っていないから個人輸入するしかありませんが)。つまり恐らく、2026年のうちにKobo端末がLCP対応することが明確になった、とみていいのかな?
◆ 突然の覚醒? ソニーの電子書籍ストア「Reader Store」が7月13日のアプリ全面刷新を予告【やじうまWatch】〈INTERNET Watch(2026年7月9日)〉
電子書籍端末の販売終了、さらには北米市場からの撤退(楽天Koboへの統合)もあって、一部ではサービス自体が終了したと誤解されているソニーの電子書籍ストア「Reader Store」。
ひどいこと言ってる……まあ確かにそういう誤解はちょくちょく散見されますけど。アップデート内容は主に「購入した本が多すぎて読みたい本をすぐに見つけられない」といった、ユーザーから集めた改修要望への対応みたいです。「サムネイルサイズが変更可能に」「コレクション機能」「ダークモード対応」など。良いですね。ストアとアプリが切り離されている現状にメスは入れるのかな?
【技術】
◆ Metaの新AI「Muse Image」公開に伴う注意点 Instagram公開アカウントのコンテンツ再利用を防ぐには〈ITmedia NEWS(2026年7月8日)〉
X(旧Twitter)のAI画像編集機能と全く同じ。拒否するための手段を用意しているだけX(旧Twitter)よりだいぶマシではありますけど、デフォルト「オン」でリリースするあたりで結局同レベルになっている感があります。
◇ Meta ditches Muse Image AI feature because it ‘misses the mark’ on users’ privacy(メタ、ユーザーのプライバシー保護の観点から「的外れ」であるとしてミューズ・イメージAI機能を廃止)〈The Guardian(2026年7月11日)〉
などと批判していたら、あっという間に廃止です。3日間。見切りが早い。X(旧Twitter)と同レベルなんて言って申し訳なかったです。まあそもそも、X(旧Twitter)が昨年末に同様の機能をリリースしてから、各国の政府関係者などからも激しく批判されてきたことを少しでも知っていれば、まともな神経なら実装しようと思わないでしょうけど。引き返せるぶん、だいぶマシ。
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