HON[.]jp メールマガジン #377 2026年6月1日版

📖週刊出版ニュースまとめ&コラムや HON.jp からのお知らせなどをお届けします。HON[.]jp と表記しているのは、SNSなどで自動的にリンクになってしまうのを防止するためです。
鷹野 凌 2026.06.01
誰でも

お知らせ

クリス・アンダーソンの名著『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(2009年・NHK出版)を再読し、日本の出版状況に合わせて考察した10年前の連載コラムが本になりました。最終章は書きおろしの「生成AIとフリー」です。

週刊出版ニュースまとめ&コラム
#717(2026年5月24日~30日)

【写真】K-BOOKS 名古屋フロンティア館(photo by TAKANO Ryou)

【写真】K-BOOKS 名古屋フロンティア館(photo by TAKANO Ryou)

 編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。HON.jp News Blog のウェブサイトでも同時に公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。

【政治】

◆ ネット履歴の外部提供、ウェブ事業者の法令順守率低く 総務省対策へ〈日本経済新聞(2026年5月25日)〉

以前、某団体のウェブサイトリニューアルをお手伝いしたとき「Google Analyticsを設置したい」という要望があったので「でしたらまずプライバシーポリシーをご用意ください」という説明をしたことがあります。それがアクセスログの第三者提供になるという認識がなかったみたいです。そういうウェブサイトが意外と多い気がしています。

◆ 生成AIの記事「ただ乗り」に歯止め 利用拒否の法的義務化が焦点〈朝日新聞(2026年5月25日)〉

検索エンジンについては、権利者の意思を事業者が守ることを義務づけた政省令がある。類似の規定を生成AIについて整えるという方法だ。

んー? この政省令って、著作権法施行規則第4条の5(著作物等の利用を適正に行うために必要な措置)のことですよね。要するに著作権法第47条の5(軽微利用)の権利制限のことですから、AI検索にもそのまま使える所在検索サービス(第1号)もしくは情報解析サービス(第2号)だと思うのですが。新たに用意する必要ってありますかね?

ただ、そもそも要約について言えば、事実だけを抽出して言い替えている(表現をそのまま使っていない)なら、権利制限以前に、著作権侵害にならない可能性もあります。それは人間による要約でも同じ。いわゆる「間接引用」というやつです。

◆ AI画像、生成・改変表示義務化 SNS選挙の法改正案骨子〈47NEWS(2026年5月26日)〉

改正対象は公選法と情プラ法です。表示義務はこの書きぶりだと一般ユーザーに対するものだと判断していいのかしら? 「SNS事業者」は別の文になっていて、別の義務がある形です。こっちは情プラ法で大規模事業者に指定されたサービスだけでしょうね。「特別国会の会期末となる7月17日までに法改正を目指す」って、間に合うかしら?

◆ なぜ日本は「子どものSNS利用」を禁止しないのか--その理由を総務省の議論から読み解く〈CNET Japan(2026年5月28日)〉

本件、いままさに総務省 デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会 青少年保護ワーキンググループで議論されています。次回は6月2日開催予定です前回4月の論点整理案を見ると、携帯電話事業者によるフィルタリングサービスの限界みたいなことが論点になっていることがわかります。でもこの記事では、フィルタリングについてまったく触れていません。なぜ? 不思議。

◆ 米CNN、AI新興パープレキシティを提訴 「有料記事を無断学習」〈日本経済新聞(2026年5月29日)〉

パープレキシティの広報担当者は日本経済新聞に「ファクトは著作権で保護できない」と回答した。

笑ってしまった。挑発してるなあ。それはそう。事実だけ抽出してオリジナルな表現をすれば、著作権侵害にはならないのです。ただ、PerplexityのAI検索で出力される要約が、元記事の表現を使っていないかどうかについては強い疑問がありますが。

あと逆に、CNNの「有料記事を無断学習」って主張もどうなんだろう? CNNがなんちゃってペイウォールの実装なのか、Perplexityがマジでペイウォールを乗り越えてるのか。AIがペイウォールの向こう側を参照してなくても、勝手に類推でそれなりに整った文章は作れちゃいますからね。もちろん、ペイウォールの向こう側がほんとうに独自で意外な価値ある情報だった場合、参照していないAIが再現するのは難しいでしょうけど。

でも、これはCNNがそうだというわけではなくあくまで一般論ですが、ペイウォールの向こう側なのにプレスリリースなど公開情報だけで構築されているような、しょうもない記事も世の中には多いわけですよ。「お、お前はなぜこれをわざわざペイウォールの向こう側に?」と問い詰めたくなります。

【社会】

◆ 「若者がバカになるから」ではなかった…「北欧諸国のデジタル教科書離れ」のウラにある深すぎる事情〈PRESIDENT Online(2026年5月25日)〉

4ページ目の北欧諸国PISA受験除外率問題は知らなかった。PISAで読み上げソフトの使用が認められなくて、受験不可能になっちゃってたんですね。デジタル教科書導入への議論で、読売新聞をはじめとする反対派が学習障害や読字困難のある児童生徒のアクセシビリティをまったく考慮してないように見えるのが気になっていた(私も週刊まとめ#716で触れたばかり)ので、よい指摘だと思いました。

◇ 低学年は「紙の教科書」、小学校長の9割が希望…読売全国調査〈読売新聞(2026年5月26日)〉

訂正します。「考慮してないように見える」と書いたばかりですが、「考慮してない」と断定すべきですね、これは。考慮していたら、そういう設問を用意するはずですから。こんなの「紙が良い」って言わせるための誘導調査じゃないか。

試しに読売新聞のサイト内を検索してみても、驚くほどアクセシビリティに関する記事は少ないです。関心ないんだろうなあ。「新聞は社会の公器」って、もはや形骸化しちゃってるのかもしれません。紙メディアを推したいがために、歪んじゃってる。

◆ 大学出版 第146号[2026年5月1日発行]〈大学出版部協会(2026年5月25日)〉

仲俣暁生氏が「学術出版における『軽出版』の可能性」というコラムを寄稿しています。無料で閲覧可能です。確かに、学会のとき受付のそばで本を販売しているのは、規模が小さいだけで、文フリなどの即売会とほぼ同じですね。日本出版学会の春季研究発表会でも売ってました(まんまと買いました)。

ちなみに学会のワークショップ「デジタル時代における学術出版エコシステムの再構築」では、有斐閣の江草貞治氏が「学術専門書は300~1000部の世界」という話をされていて、仲俣氏の言う「軽出版」ってまさにこのボリュームだよなと感じながら聞いていました。

実際、学術専門書の収益に対するインパクトは小さく、授業のテキスト販売が主要な収益基盤だった(過去形)そうです。博論でも9割は本にならない(できない)っていう話もされていたので、ゲートキーパー的役割も重要なんでしょうけどね。あとは、信頼性を担保する編集機能。

◆ 「小説家になろう」作品へのAI利用の開示を必須化 本文等の全文AI生成は禁止に〈KAI-YOU(2026年5月26日)〉

9月1日以降は「AI直接使用」「AI間接利用」「AI補助的利用」「AI不使用」の4種類から選択する形になるそうです。これ、たとえばジャストシステムの「ATOK」は、1993年の「ATOK 8」の時代から「AI変換」を売りにしているわけですが、「ATOK」を使ってると「AI補助的利用」になるわけでしょうか? それとも、最新版で追加された生成AIアシスタントの「ATOK MiRA」を使ってなければ「AI不使用」と言えるんでしょうか? あるいは、Wordで文章を書くと「高度なAI駆動型の文章校正」機能が自動で働いてしまう(設定でオフにしていない限り)わけですが、これも「AI補助的利用」でしょうか? なんか「完全にAI不使用です」と言い張るには細心の注意が必要な気がする……。

◆ 本の情報誌「ダ・ヴィンチ」休刊へ 「紙媒体としての役割に区切り」〈朝日新聞(2026年5月26日)〉

おお……おつかれさまでした。ダ・ヴィンチ本誌はいちどだけお仕事させていただいたことがありました。2013年9月号『ブレイクブレイド』連載中の吉永裕ノ介氏へのインタビュー記事です。そのあと逆に、北尾トロ氏の連載でインタビューいただき載ったこともありました(「電子書籍始めました!」の回)。「ダ・ヴィンチ電子ナビ」時代には何回か仕事してますけど、「ダ・ヴィンチweb」になってからは縁が遠いなあ。

◆ 【お詫び】きんどう出張版の更新を休止します。Xの仕様に勝てません〈きんどう出張版(2026年5月26日)〉

おつかれさまでした。Kindleストア以外にも手を広げようと、DMMブックスとFANZAの新刊やセールの情報を「出張版」で配信されていたのですが、記事をX(旧Twitter)に流すとアカウントがロックされてしまうという状態になってしまったそうで、運営が困難になってしまったそうです。とはいえ、すでにnoteの再開を目指し始動しているなど、相変わらず「不屈」だなあと感心させられます。

◆ Library Orgs Urge Big Five to Address Digital Pricing((アメリカとカナダの)図書館団体が大手5社に対しデジタル料金体系の見直しを要請)〈Publishers Weekly(2026年5月27日)〉

電子図書館サービスの料金体系が「多くの小規模図書館にとっては持続不可能」といった訴えがなされているようです。中小出版社のコンテンツには買切りの選択肢もあるのに、大手出版社には選択の余地がないから大手だけ対象とした要請になっているとのこと。

日本の電子図書館サービスはアメリカ出版大手のモデルを踏襲してますから、日本でも似たような不満の声はよく聞きます。実際、それで持続できずに止めてしまった館もありますし。団体としての見直し要請がいつ出てもおかしくないと思っています。

◆ 「Fantia」2次元ジャンルの新ガイドラインを撤回「以前の基準に戻す」〈KAI-YOU(2026年5月29日)〉

え、撤回できるんだ。「厳格な法的指導を受けた重要かつ緊急性の高いもの」って、なんだったの? という……まあ、方針変えられるだけマシという感じもしますが。しかし、指摘を受けたのは「法的機関」まで明らかにしてるのに、頑なに警察とは言わないのはなぜ。指導が「法的機関」からだと明らかになったなら、「政治」ジャンルで取り上げたほうがいいのかなあ?

【経済】

◆ Kobo Plus expands into European countries(コボプラスがヨーロッパ諸国に進出)〈Good e-Reader(2026年5月28日)〉

に、日本はいまだ「おま国」のままなんですが。いつ来ますか? 始まるなら電子取次経由でオファーがあるだろうから(なかったら泣いちゃう)、いまのところ動いていないことは確かでしょうけど。

◆ 日販GHD、減収赤字決算に。日販は約20億円の営業損失〈新文化オンライン(2026年5月29日)〉

◆ トーハン決算、「取次事業」40億円超の赤字に〈新文化オンライン(2026年5月30日)〉

どちらも本業では利益が出ない状態に陥ってます。「輸送協力金」を各社個別にゼロベースで再交渉するという報道もありました。正念場。

【技術】

◆ 8 AI bots now write 50% of X’s Community Notes(現在、8つのAIボットがXのコミュニティノートの50%を作成している)〈Indicator(2026年5月26日)〉

「コミュニティノート」はTwitterがXに変わってから実施された中では数少ない優良施策のひとつだと思っていたのですが、知らないうちにAIボットに書かせる公式機能が出てたんですね。2025年7月からですって。それから1年足らずで、コミュニティノートの半数がAI製になってしまったと。んー……どうなんだそれは。第三者が高く評価したコミュニティノートだけが公開される仕組みだから、もしAI出力がハルシネーションだらけだったとしても高く評価されなければ問題ないのでしょうけど。うーん……。

◆ 購入した電子書籍がサービス終了後も問題なく読み続けられるような“所有できるDRM”は日本でも普及するだろうか?(してほしい)〈HON.jp News Blog note支局(2026年5月27日)〉

HON.jp メールマガジンで2026年4月14日に配信した増刊号(サポートメンバー限定記事)をnoteに転載、個別に購入可能な形で公開します。途中まで誰でも読めます。note支局の使い道がみつかった。

◆ Google、AI検索に「優先ソース」機能追加 信頼できる情報を見つけやすく〈ケータイ Watch(2026年5月28日)〉

おお、これでAI検索もパーソナライズがさらに進みますね。HON.jpを「優先ソース」に登録する場合はこちらのリンクからどうぞ

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本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。

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日本出版学会 春季研究発表会が無事に終わりました。個人研究発表「日本における電子書籍化の現状(2025年版)」のスライド資料は researchmap で公開しておきます。「講演・口頭発表等」のタブって、こうやって使えばよかったんですね。過去の講演も時間作って登録しておきたい。(鷹野)

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