HON[.]jp メールマガジン #390 2026年9月7日版
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9月19日(土)12時から世田谷文学館にて朗読フェスティバル「NovelRecital」開催! 小説家たちが“自分の作品を自ら朗読・販売”するハイブリッド・イベントです。一般入場チケット残りわずかとなりました! お早めに!
週刊出版ニュースまとめ&コラム
#730(2026年8月30日~9月5日)
編集長の鷹野が、広い意味での出版に関連する最新ニュースから気になるものをピックアップし、独自の視点でコメントします。HON.jp News Blog のウェブサイトでも同時に公開していますので、SNSでシェアいただく場合や、リンクを貼っていただく場合は、こちらのURLをご利用ください。
【政治】
◆ 「数万曲を無断でAIに」ソニー傘下など35社、アンソロピック提訴〈朝日新聞(2026年8月31日)〉
最初、タイトルを見て「音楽系か……うちが取り上げるネタではないな」と思ったのですが、よく読んだら「歌詞」すなわち言語の著作物の話だったので触れておくことにしました。Anthropicが海賊版書籍をダウンロードして学習したことは連邦地裁判決で著作権侵害が認められています(ただし正規に購入してスキャンした行為はフェアユースが認められその後に和解)から、書籍以外の著作物でも当然「ならばうちも訴えれば勝てる」となりますよね。なるほど。ただし、Anthropicは徹底抗戦の構えを見せているそうです。
◆ 総務省、「pixiv」「note」など情プラ法の「大規模プラットフォーム事業者」に追加、誹謗中傷への迅速な対応など求める〈INTERNET Watch(2026年9月1日)〉
私は、noteは最初から指定されると予想していたので、正直言って「やっとか」感があります。しかし本件に関連して、指定されたnoteのCSO 深津貴之氏が、他の大規模プラットフォームに「みんなで共同で安全削除基盤」を作れないか? 「車輪の再開発するより、みんなでいいのつくって共用するほうがよくない?」とX(旧Twitter)で呼びかけていて、一部で物議をかもしていました(炎上というほどではない)。
確かにこのあたりって、法律の名称が変わる前のプロバイダー責任制限法時代からの積み重ねがあるわけです。テレコムサービス協会のガイドライン(PDF)とか、削除請求する際に使うことが推奨されている業界標準書式の「テレサ書式」などが、すでに存在しています。むしろ、noteはこれまでどうやって削除申請に対応していたんだ? という疑問が。削除ポリシーは各社違うわけですから「車輪の再発明」というのもちょっと違う気がします。車輪にもいろいろ種類がありますよね。
◆ 文化庁概算要求2335億円をどう読むか――「補正頼み」から当初予算重視へ、クリエイター政策の転換〈Tomoki Sakuta|Arts & Considerations(2026年9月1日)〉
おー、これは知らなかった。7月に閣議決定された財務省「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(PDF)」で、補正予算で追加するような従来のやり方ではなく「恒常的な施策は当初予算に計上せよ」とされていたのですね。だから概算要求が大きくなっている、というのもあるのか。過去との比較では注意が必要ですね。
◆ アニメ・漫画を新興途上国へ売り込む「ソフトパワー外交」に本腰、中南米・アフリカでファン拡大目指す…外務省〈読売新聞(2026年9月4日)〉
外務省も「クールジャパン政策」には当初から関わっていますが、これまでは主に日本文化の情報発信が主な役割だったのですよね。「売り込み」に関わるというのは、かなり本腰を入れている感があります。そういえば中南米あたりって、2015年に亡くなられた櫻井孝昌氏がポップ・カルチャー外交をやっていた地域でした。そうか、亡くなられてからもう10年以上経ってしまったのか……。
【社会】
◆ 小説「いぬかみっ!」のイラストレーター、自らの作品と酷似した絵が「無断使用」と出版社提訴へ〈読売新聞(2026年8月30日)〉
訴えられた出版社WiZHは、小説「いぬかみっ!」の著者・有沢まみず氏が創業した会社、という情報が記事内にない……調べてみたら、もともと電撃文庫で紙も電子も出ていたのが、紙は恐らく品切重版未定(KADOKAWAや電撃文庫の公式サイトのラインアップには残っている)で、電子は「諸般の事情」で2020年3月に販売停止、WiZHの設立が2020年12月という経緯が確認できました。
そして2026年5月に電子で総集編を発売する際、イラストレーターは電撃文庫時代の若月神無氏ではなく、さくら小春氏に切り替わっています。これはいわゆる「仁義を通してなかった」ことにより、揉めて裁判沙汰になってしまった、という事例のようです。
表紙を見比べるとだいぶ印象が違うので、著作権侵害の訴えが通るかどうか。原作小説表現だと黒髪なのが、若月氏の工夫でビジュアルでは緑色になったそうですが、配色に著作権は発生しないからなあ……。
◆ 【Renta!】小説・実用書のスマホ版ビューアーに音声読み上げ機能を実装!〈株式会社パピレスのプレスリリース(2026年9月1日)〉
対応が遅い! でもやらないより断然マシです。ゼロになにを掛けてもゼロですから。一歩踏み出したことは評価。しかしなぜOS標準の読み上げ機能ではなく、独自に実装するのか。 恐らく、OS標準だと「テキストデータをOSに渡す」ことになるので、その過程での流出・海賊版化を防ぐためという理由なのだと思います。でも海外勢の、Amazon、Apple、GoogleあたりはふつうにOS標準で対応してますから、いまさらなのですよね。
【経済】
◆ 「ガチ0秒読書」買った本が公式に自分のAIの「知識源」になる日 ——GoogleのExpert Intelligenceを調べてみました〈オーディオブックファンクラブ(2026年8月30日)〉
うおー! 先を越された! なんて言ってるうちにもう続編も出てる! かなりの部分は生成AIを使って書いているようですが、それでもこのレベルでがっつり深掘りしてるなら、私の書く余地はないかな……と思ってしまいました。私はすっかり筆が遅くなってしまった(というかNovelJam 2026名古屋会場の開催で手が回らなかった)。でも「対Amazon」の観点は書かなかったのですね。続編でも。私のために残してくれたのかな? がんばります。
◆ 2026年8月31日 激変する市場のトレンドと次世代ビジネス戦略 ーー「電子書籍ビジネス調査報告書2026」から〈日本電子出版協会(2026年8月31日)〉
私も今回から著者として一部を執筆させていただいている「電子書籍ビジネス調査報告書」ですが、新指標「デジタルパブリッシング・コンテンツ市場」などには一切タッチしていません。せっかくの機会だからと思い、いっぱい質問してしまいました。答えづらい質問ばかりですみません。
◆ 【書店員の目 図書館員の目】104 大型書店の棚がつまらなくなっている(菊池壮一)〈The Bunka News デジタル(2026年8月31日)〉
そういえば先日、「リニューアルした三省堂書店神田神保町本店の棚が面白くない」という意見もありました。書店側の「独自に仕入れる」機能が弱くなっているのでしょうか。ロードサイド・郊外型の書店が次々と生まれていた時期には「金太郎飴書店」という批判もありました。取次主導の仕入れだとどうしてもそうなってしまうのかな、という感じがします。まあ、中小出版社のマニアックな本を扱うのは、取次も書店も面倒でしょうからね。
◆ 世界に広がる中華BL 講談社×中国小説サイトで翻訳刊行を後押し〈日本経済新聞(2026年8月31日)〉
中国では1年前にBL作家が一斉摘発される事件が起きているわけですが、こういう話題なのにまったく触れないのですね……ポッドキャスト「#39 中国BL作家の摘発と表現規制」でも取り上げたんですが、そういえばまだテキスト化してなかった。手が回ってないなあ。
◆ 本屋ライター和氣正幸の【キラメク書店のヒラメク工夫】⑨ジワジワ増加中!本屋の出版〈The Bunka News デジタル(2026年9月1日)〉
この記事には名前が挙がってませんが、大垣書店の「KYOTO MAGAZINE」という事例もありますね。出版社が直接販売を増やしているように、書店もどんどん自ら商品を企画・開発して自社ブランドで販売すればいいと思うのです。
◆ Study Says Library E-book Lending Hurts Industry Sales(図書館の電子書籍貸出が業界の売上を阻害するという研究結果)〈Publishers Weekly(2026年9月1日)〉
これはまた日本に飛び火しそうな研究ですねぇ……AAP公式発表はこちら。報告書PDFをGemini Notebookに放り込んでいろいろ確認してみましたが、疑似相関でないかどうかはけっこう慎重かつ丁寧に検証しているようです。電子図書館向けの販売ライセンスは「制限付きアクセス(Metered Access)」が主流(それも圧倒的に)だと思いますが、それでも「館まで足を運ばなくていい」などの利便性から、一般ユーザー向け販売にも影響が出ているということのようです。うーむ。
◆ 【お知らせ】HON[.]jp News Blogが「フランクフルト・ブックフェア2026」の「Global 50 CEO Talk」公式メディアパートナーに決定。急成長を遂げる「トニーズ」CEO登壇セッションをレポート〈HON.jp News Blog(2026年9月3日)〉
司会のカルロ・カレンホ氏(出版コンサルタント・Publishing Perspectives 寄稿編集者)からお誘いいただき、公式メディアパートナーになりました。文化通信や新文化をさしおいて、ウチでいいのだろうかという疑問もありつつ。この「トニーズ」CEO登壇セッションについてのお知らせは、NovelJam 2026名古屋へ向かうため早起きしたら届いていて、原稿は新幹線の中で書きました。だれかほめて!
◆ アンソロピックのAI学習向け書籍販売、日販が契約 米出版取次は拒否〈日経ビジネス電子版(2026年9月4日)〉
あちこちでかなり物議をかもしているニュース。私はまずタイトルを見て、相手がAI企業だからとかそういう話以前に、卸が一般企業(非書店)相手に本を売るのってアリなのか? という疑問を持ちました。仮に発注を受けたのが書店なら、相手が誰だろうと大量発注だろうと、わざわざ用途まで確認しないはず。買う側もわざわざ「AI学習用途です」なんて言わないでしょう。だから「なぜ卸が直接売ったのか?」がポイントになると思いました。
記事を読んだら、大量発注だからと与信までとっていたそうです。ならばもしかしたら、Anthropicが「書店をやる」などと嘘を言ったのかもしれません。もしそうなら、日経ビジネスのタイトル「AI学習向け」はミスリードです。弁護士・福井健策氏の解説もある充実した記事だけに、タイトルは正直「どうなんだこれ?」と思ってしまいました。
個人的には「卸による直接販売」という点さえクリアになっているなら、AI企業相手に本を売っても大きな問題はないと思います。福井氏の解説にもあるように、日本の法律で問題になるとしたら「書籍とそっくりな表現を出力すること」や「著作権者の市場を奪うなど利益を不当に侵害すること」を目的として複製した場合です。「これは道義的にどうなんだ?」という疑問を持つ人はいるとは思いますが。
しかし、記事内にある書協の生成AI関連ワーキンググループの方による「AI進化と利用がここまで急速に進んでしまった以上、利用そのものを禁止することはもはや現実的ではなく、権利者・出版者の権利と利益を守りつつ、共存のためのルールを模索していかなければならない時代」という回答は、ものすごーく地に足の着いた現実的な意見で、正直ちょっと意外でした。よく現実を見てらっしゃる。むしろ私は好感を持ちました。誰の意見だろう?
結局、「学習」用途での利用って最初の一発だけだし、モデルの中身にまるごと取り込んでるわけじゃない(複製ではない)から、レアな領域以外は学習元データがそのまま出てくることってあんまりないはずなんですよね。統計的に処理されるという原理的に。私は、むしろ警戒すべき(というか権利者がしっかり対価をとるべき)なのは「参照」のほう、という考えです。こちらのほうが継続的に何度も利用される話になりますから。たぶん書協の方も、そっちを見据えているのだと思います。
◆ 版元ドットコム 「POPアーカイブ」公開 書店員の販促活動を記録・保存〈The Bunka News デジタル(2026年9月4日)〉
版元ドットコム事務局のメルマガ「ほにゃpress」で号外が届いていました。掲載例を見ると、雰囲気がわかると思います。面白い。「勤務先が変わっても継続して利用できます」という謳い文句に「ん? 書店員が仕事で書いたPOPは職務著作になるよね?」と疑問に思ったのですが、書店員向け案内には「業務として制作したPOPを公開する場合は、所属先の承諾を得てください」と書いてありました。なるほどそういう方法でクリアするのか。
【技術】
◆ 読売新聞データベース「ヨミダス」にAI検索機能を搭載〈読売新聞の会社案内(2026年8月28日)〉
おお! ちゃんと準備してたんですね。素晴らしい。あれだけ生成AI企業を批判している読売新聞のことですから、権利関係的にまったく問題ないモデルを使っているはず。しかし、どこのモデルを使っているか? は明かされていません。ものすごーーーく気になります。「ヨミダスでは権利関係的にまったく問題ないモデルを使っています!」って、むしろアピールすべき点ですよね。
◆ AIは「良い広告コピー」を見抜けるか 電通など3社、11万件超の評価データで検証〈CNET Japan(2026年9月1日)〉
AIに「書けるか」ではなく、AIに「見抜けるか」の検証です。十分な評価データがあるジャンルでは「AIの評価とコピーライターの評価に正の相関がみられた」とのこと。AIは統計的に処理しているわけですから、大量の教師データがあれば評価もできるわけですよね。コピーや見出しのような短い文章ではなく、もっと長い文章でもいずれ可能になるかな?
本稿はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際(CC BY-NC-SA 4.0)ライセンスのもとに提供されています。営利目的で利用される場合はご一報ください。
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日刊出版ニュースまとめ
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雑記
本文でもチラッと書きましたが、9月3日から5日にNovelJam 2026名古屋が先行開催されました。すでに2作品が完成しています。次は10月10日から12日に東京と沖縄で開催です。今年は同時開催を止めて「9月から10月にそれぞれの地域の都合がいい日程で」という形にしました。だから、東京と沖縄が同じ日になったのはたまたまです。他にも9月13日に文学フリマ大阪出店、9月19日にNovelRecital、10月4日に文学フリマ福岡、11月8日に文学フリマ東京、11月15日にNovelJam贈賞式と、イベントが続きます。体力が保つかな?(鷹野)
発行人:HON.jp
編集人:鷹野凌(HON.jp News Blog 編集長)
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