“10代のマンガ離れ”にあまり異論はないけど、その理由は“大人向け向け課金に走った”からなのか?
2026年4月6日にPRESIDENT Onlineで配信された飯田一史氏の「10代の「マンガ離れ」はもう止まらない…「大人向け課金」に走った日本のマンガ界の"歪さ"を示すデータ」が話題になりました。私の視界の範囲では、前半の“10代のマンガ離れ”に対する異論が多いようです。
でも私は、前半にあまり大きな異論はありません。むしろ異論があるのは、後半の“大人向け向け課金に走った”からだという見解についてです(PRESIDENT Onlineでは4ページ目)。本稿ではその理由についてお話していきます。
確かに10代のマンガ離れは起きている
前半の“10代のマンガ離れ”については「週刊出版ニュースまとめ&コラム #710」でも触れていますが、本稿ではもう少し深掘りします。まず紙のマンガ誌(コミック誌)については、販売額が1995年をピークに30年間ずっと減少し続けています(出典:出版科学研究所)。
【以下のグラフ画像はすべて自由にご利用ください】

コミック誌(紙)市場推移(データ出典:出版科学研究所)
2025年はピークの11.7%(約9分の1)にまで減少していますから、10代に限らず、紙のマンガ誌が買われなくなっている(≓読まれなくなっている)ことに疑いの余地はありません。グラフにすると目を背けたくなるような減少っぷりですが、現実を直視しましょう。実は雑誌全体ではここまで酷くない(ピークの約4分の1)のですが、傾向は似ています。
つまり、定期的に刊行され小売店の安定収入源になっていた雑誌市場の縮小が、書店やコンビニ・駅の売店などの経営を直撃したのです。書店の減少はよく話題になりますが、雑誌を売っていた駅の売店はいつのまにかほとんど姿を消しました。コンビニの雑誌コーナーもどんどん狭くなり、雑誌を扱わないところも出ています。
その結果、子供とマンガ誌(紙)の接点が失われつつあるのは事実です。子供がお小遣いを握りしめてマンガ誌を買いに行くことが、どんどん物理的に難しくなっています。ここに関しては、恐らくみんな異論はないはずです。では電子マンガはどうなのか? HON.jp News Blogでは普段、市場推移グラフを積み上げ縦棒で描いてますが、集合縦棒で描き直してみるとこうなります。

紙+電子コミック市場推移(データ出典:出版科学研究所)
マンガ誌(紙)に比べると、コミックス(紙)は2014年までほぼ横ばいに近いくらいの緩やかな落ち込みだった(ピークは2005年)のですが、2015年から2018年にかけて急減します。恐らくこの時期は海賊版サイト「フリーブックス」や「漫画村」などの影響もあったでしょう。
2019年から2021年までは鬼滅フィーバーとコロナ禍による巣ごもり特需で盛り返しますが、沈静化した2022年からの落ち込み方はさらに急激です。電子コミック市場の急成長によるカニバリズムが起きていることは否定できません。
電子コミック市場で小学生の利用は伸びていない、ただし……
問題は、電子コミック市場は急成長したのに、10代、とくに小学生の利用は伸びていないこと、それどころか減っているような状況すら見える点です。この10代にマンガがあまり届いていないことについての危機感については、私も飯田氏と同意見です。
ただし、飯田氏が補足記事で挙げているインプレス「電子書籍ビジネス調査報告書」の調査は、飯田氏自身も述べているように「10代と言っても15歳以上が対象」なので、中学3年生から大学1年生までに限られます。つまり、仮に小学生がウェブマンガ誌「週刊コロコロコミック」を利用していても、その数字はこの調査にまったく反映されません。
また、PRESIDENT Onlineの3ページ目で引用されているベネッセ教育総合研究所×東京大学の「子どもの読書行動の実態 調査結果からわかること」は、母集団が若干偏っている難点があります。書籍『パネル調査にみる子どもの成長』(勁草書房・2024年)によると、たとえば「進研ゼミの受講者がやや多い」傾向があるとのこと。つまり、やや教育熱心な家庭環境を中心としたデータだと考えたほうがよさそうです。
また、ベネッセ×東大調査の書籍に関する設問は「利用冊数」を尋ねているため、たとえばウェブマガジンの連載や「待てば無料」のような話読み形式で読んでいる場合は冊数を答えようがないという問題があります。これは冊子体しか考慮していない設問が悪いです。
青少年のインターネット利用環境実態調査
そのため私は「週刊出版ニュースまとめ&コラム #710」で、こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」の数字を引用しました。平成26年(2014年)度から利用内容の項目に「電子書籍」が追加されており、経年変化が追えるようになっています(以前は内閣府調査)。
調査方法は、個別面接聴取法、訪問配布訪問回収法、オンライン調査法、郵送回収法のいずれかです。調査票によると「あなたはインターネットを使って何をしていますか」という現在進行形の尋ね方なので、現在の利用状況についてであると解釈できます。政府の調査なので、信頼性はそれなりに高いと言っていいでしょう。
まず令和7年(2025年)度の数字だけ挙げると、電子書籍(小説・マンガ等)の利用率は「スマートフォン」では小学生:5.1%、中学生:23.3%、高校生:38.3%です。「いずれかの端末」だともう少し値は増えますが、それでも小学生:9.4%、中学生:24.9%、高校生:39.2%です。
この調査では、保護者調査の9歳以下では利用内容を尋ねていないため、本人調査の10歳(小学4年生)以上に限った値ではあります。それでも、電子書籍(小説・マンガ等)が若年層にはあまりアプローチできていないのは事実だと考えるべきでしょう。コロコロコミックの主要ターゲットである小学4年生から6年生に、ウェブマンガ誌「週刊コロコロコミック」は10%未満しか届いていないのですから。
なお、小中学生のスマートフォン利用率は、6歳:15.3%、7歳:22.8%、8歳:28.1%、9歳:33.3%、10歳:39.9%、11歳:50.8%、12歳:66.3%、13歳:84.4%、14歳:83.0%、15歳:91.7%です。9歳以下の低年齢だと「保護者と共用」が67.4%と高いのですが、10歳以上ではすでに74.9%が「こども専用」になっています。
これに対しインターネット利用率は低年齢でもかなり高く、6歳:79.9%、7歳:88.6%、8歳:91.3%、9歳:94.0%(ここまで保護者による回答)、10歳:97.9%、11歳:98.6%、12歳:99.4%となっています。自分の端末を持っていない子供は、学校配布指定のGIGA端末、ゲーム機、テレビ、自宅用(つまり共用)パソコンやタブレットでインターネットを利用しているのが実態です。
経年変化はどうか?
では経年変化はどうなっているでしょうか? 実はこの「青少年のインターネット利用環境実態調査」の電子書籍関連は、平成26年(2014年)から令和2年(2020年)までは「電子書籍」だったのが、令和3年(2021年)から令和6年(2024年)まで「マンガ」と「読書」に分離し、令和7年(2025年)は「電子書籍(小説・マンガ等)」とふたたび統合されるという経緯を辿っています。このためグラフを読み取るのがけっこう難しいのですが、小学生、中学生、高校生を個別に見ると、共通している点と、小学生だけ特異な動き方をしている点があることに気づきました。
まずは高校生の推移です。2018年に下落している点と、2024年にも下落している点が気になります。2025年は統合されてしまったため、その続きの傾向が見えなくなってしまったのが残念です。でも2020年と比べたら10ポイントくらい増えている、くらいのことは言えそうです。2025年の時点で「高校生の4割近くが電子書籍(小説・マンガ等)を利用している」なら、まあまあ健闘しているのでは、というのが私の正直な感想です。
続いて中学生です。こちらは2016年と2018年に若干の下落傾向が見えます。高校生が下落した2024年は横ばい程度です。なお、GIGAスクール構想により令和3年(2021年)4月には小中学校における1人1台端末の環境が実現していますが、中学生は自分のスマートフォンを持っている率が高いからか、このグラフからはあまり影響を感じません。2025年の時点で「中学生の4分の1が電子書籍(小説・マンガ等)を利用している」というのは、高校生に比べるとちょっと低いなあ、というのが私の正直な感想です。
続いて小学生です。「マンガを読む」が2022年をピークに2年連続で下落傾向だった点が大変気になります。こちらも高校生と同様、2025年は統合されてしまったため、続きの傾向が見えなくなってしまったのが残念です。いずれにしても2025年時点で「小学生の10分の1が電子書籍(小説・マンガ等)を利用している」という状況は、かなり危機的ではないかと思われます。紙市場の縮小をほとんど補えていないと言っていいでしょう。
また、中学生・高校生と似た傾向としては、2016年と2018年のスマートフォン利用に下落傾向が見られる点が挙げられます。また違いとしては、中学生・高校生ではあまり差のない「スマートフォン」と「いずれかの利用機器」に、小学生ではけっこうな差が確認できます。中学生・高校生は最大でも2.1ポイント程度の差ですが、小学生では最大4.9ポイントの差があります(2020年)。
つまり、2021年以降はGIGA端末による1人1台端末環境の恩恵が多少は出ていると思いますが、それ以前は何らかの理由でスマートフォンからの電子書籍利用が難しくなった可能性が見てとれます。これは、なにが要因なのでしょうか?
理由は“大人向け向け課金に走った”から?
PRESIDENT Onlineの記事に話を戻します。飯田氏は“10代のマンガ離れ”の要因として「決済手段をもたない、または少額しか決済できない小中高生は軽んじられている」ため「小中高生が読むようなマンガがそもそもウェブ上に少ない」点と、「マンガアプリの利用推奨年齢は、大抵、15歳以上または18歳以上に設定されている」点を挙げています。
私は、この意見について完全否定はしませんが、異は唱えたいです。以下は、無料登録すれば誰でも読める、読者限定パートです。NPO法人HON.jpの活動を支援したい方はぜひサポートメンバーに登録してください。


